酪農協会のようなところにつくと、親方は窓口で何かしらの手続きを済ませた。
あとは別の牧場の親方が迎えに来てくれるという事だった。
元の親方は気まずい空気を悟ったのか、すぐに帰りたがっていたが、まもなく別の牧場の親方が来た。
その親方は見た目が怖そうな人で、いかにも「てやんでい!馬鹿野郎!!」と叫びそうな人だった。
僕の不安はさらに高まる。
元の親方とその家族、そして標準語の男性に別れをつげ、僕は新しい親方の車に乗り込んだ。

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新しい親方は極めて無口で、僕も緊張していたため何も話さなかった。
すると新しい親方が口を開いた。「搾乳はやった事あるの?」と。
搾乳とは牛の乳を搾る事。チューブのような機械を牛の乳にスポンと取り付け乳を搾りだす作業の事をいう。
僕は「それはやっていないです」と答え、また沈黙が続いた。

新しい牧場の家族はこころよく僕を受け入れてくれた。
気難しいと思っていた親方も相当シャイなだけであった。
前の牧場でクビになったとは伝えられておらず、「酪農スタッフを募集していたこの家族のために、酪農協会の人が経験者を探してくれた」という事になっている。
僕は心を入れ替え、この牧場に精いっぱいの力を降り注いで業務に取り掛かる事を心に決めた。
すると、ものすごく家族は僕を評価してくれ、やった事のない搾乳などの業務をいろいろと教えてもらう事になった。

牧場

その家族はおばあちゃんと親方の2人暮らしで、親方は独身。
中標津で一人暮らしをしている妹さんや、近くの街に住んでいる姉家族がよく遊びに来ていた。
施設にいるおじいちゃんもいるが、たまにしか帰ってこない。
おばあちゃんも業務をするのだが、このたび入院することになり、急きょスタッフを募集したという経緯があった。

続く…

 

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