「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣被告(25)に下された懲役9年の実刑判決は果たして妥当なのか。
渡辺被告は自身が勤務していた風俗店やマッチングアプリで知り合った3人の男性に好意を抱かせ、1億5000万円以上を騙し取ったほか、所得を申告せず脱税、さらには自ら作成した詐欺マニュアルを販売したとして、詐欺罪や詐欺ほう助の罪に問われている。
犯罪に手を染めてしまった経緯についてネットで調べてみると、渡辺被告の意外な過去が明らかになった。小さい頃から父親のDVに悩まされていた渡辺被告。社会に出ても職場になじめず孤独感をより一層深めていった。
そんななか、知人女性に連れられて行ったホストクラブで、担当(ホスト)と出会ったことがきっかけとなり、生きる活力を見出していったのだ。特別な女の子として扱ってくれることにより、自己顕示欲が満たされていくのを実感していたそう。
ホストに貢ぐお金を稼ぐため、渡辺被告は風俗店で働くことを決意。徐々にホストにのめり込んでいった。さらに「売掛」(ツケ払い)を背負うことになり、詐欺に手を染めていく。手にしたお金は生活費以外すべて担当につぎ込んでいたという。
こういった経緯を知ると、父親からDV、母親からモラハラを受けて育った若い頃の自分と重ね合わせてしまう。そんな自分は大人になってから父親からの暴力は減ったものの、両親から容赦ない攻撃を受けていたので、家に居場所なんてなかった。
ボストンバッグを手にして上京し、水商売の世界に足を踏み入れたあの頃。客としてお店に入って勉強してみたいという理由で、とあるキャバクラに足を運んだ。しかし相手はプロ。僕が来たことにすごく喜んでいたキャスト(キャバ嬢)は、多額の借金を抱えていたようで、その返済のために水商売をしていると言っていた。彼女のためになるのであれば、助けてあげたいとさえ思った。
見事に彼女の術中にはまってしまった僕は、それから毎週通うようになった。知人もいない東京で、心のよりどころが欲しかったのかもしれない。彼女に会いに行く事が僕の心の支えになっていた。この子だけは僕を理解してくれていると勝手に思い込んでいた。
3ヵ月ほど経つと、水商売で売り上げを上げるシステムが理解できるようになってくるので、僕の場合は幸いにも目が覚めたのである。彼女も「色恋営業は絶対にしない」と公言していて、「かのっちはもう来ない方がいいよ。お金使いすぎだよ」と言っていたのが救いだった。それも策略だったのかもしれないが。
もし、渡辺被告のように”目が覚めない”ままだったら、いったい自分はどうなっていたんだろう。そう考えると、時に恐ろしくなる。色恋営業をして女の子に貢がせていたかもしれないし、犯罪に手を染めてしまっていたかもしれない。
そんな渡辺被告。これまでの裁判で検察側は「遊ぶ金欲しさの極めて短絡的で身勝手なもの」などとして懲役13年、罰金1200万円を求刑。22日の判決公判では名古屋地裁が「意中のホストらの売り上げに貢献するための資金を得たいという動機は身勝手で酌むべき余地はない」などと指摘し、懲役9年、罰金800万円の判決を言い渡した。
いやいや、ちょっと待ってほしい。渡辺被告が欲しかったのは”遊ぶ金”ではない。自分を認めてくれる存在だ。つらい過去を背負った渡辺被告にとって、これまでにとった行動は決して身勝手ではない。人権を尊重してあげられなかった周りの人間にも問題があるのだ。
被害に遭われた方々のためにも、これまで騙し取ったお金は全額しっかりと返済していくべきだとは思うが、刑事罰についてはもう少し酌量の余地があってもよいのではないかと思った次第である。
コメント