僕は昔から「長いものには巻かれろ」という考えが大嫌いだった。高圧的で独裁的な両親に育てられたためか、それは小さい頃から根づいてきた考えなのだ。
中華屋でアルバイトをしていた学生の頃。パートのおばさんに「『長いものには巻かれろ』って言葉知ってる?社会に出たら(組織の中では)、偉い人(立場が上の人)の言うことは黙って聞いていればいいのよ。そうすることで物事はうまくいく」と言われたことがある。
初めて聞く言葉を耳にした僕は全力でその意見を否定した。「間違ったことを言われても、理不尽なことを言われても、従わないといけないのか?そんなのおかしい」と・・・。
パートのおばさんは「こいつわかってないな」という顔をしていた。若造が生意気言っているとでも思ったんだろう。そういう僕は心のどこかで、もしかして社会に出たら自分もそういう大人になってしまうのだろうかという不安も感じていた。
それから僕は、大人になって社会に出て、いろいろな会社でいろいろな組織形態を経験した。昔ほど尖ってはいないし、多少理不尽なことを言われてもグッとこらえるぐらいの耐性はついてきたと思っている。
しかし、「長いものには巻かれろ」という言葉の意味は未だに理解できていない。たとえ目上の人でも間違ったことを言っていたら指摘はするし、理不尽なことを言っていたら反論もする。ただ感情的にならなくなっただけ。
今、パートのおばさんに会ったら言ってやりたい。「日本人のそういう気質や風潮が社会を、そして組織をダメにしている。自由に意見を言い合えることこそが生産性を上げる一番の手法なのだ」と。
そして今、若い人にはこう教えてあげている。
「俺の言うことは聞かなくていい。ただ、長いものには巻かれるな」
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