淡くも苦い初恋の思い出

初恋 世の中って!?エッセー
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僕は中学までずっと野球を続けていた。
当然、女の子と接する事もなく、恋愛とは遠くかけ離れた生活を送っていた。
とある理由で野球が続けられなくなり、高校に入ってからはクラブ活動には参加していない。

高校に入って、まず仲良くなった人が同じクラスのH君。
いつも彼と一緒に遊んでいた。
彼はエレキギターが得意で、高校生とは思えない早弾きをいつも見せてくれる。
彼の影響で余ったギターを安く譲ってもらい音楽にのめりこんだ。

中学までは坊主頭で気が弱く劣等感だらけだった僕にとって、他の人より少し大人っぽく、たばこを吸っていて、エレキギターが上手い彼と一緒にいることで、なんだか僕もイケてる男になったという錯覚があったのかもしれない。

彼は、中学の時に付き合っていた女の子がいたという。
その年で女の子と付き合った事があるってだけで尊敬してしまう。
お互いに思春期だった僕達はやがてエッチな話などで盛り上がるようになり、当然その年頃の考える事は「キスする時に舌をどうやってからませるのか」とか「女の子って感じると濡れるらしい」とかいう事であり、少し大人びた彼にいろいろと教えてもらっていた。

その年齢だと、当然そういった事に興味を持ち始めるのは普通なのだが、本人たちにとっては「なんだかいけない事を話している」という感覚があり、それがとても新鮮で楽しかった。

やがて僕にも好きな人ができた。
最初に好きになった人は同じクラスの少しヤンキーっぽい女の子であった。
H君も同じく、同じクラスに好きな人ができたみたいで、お互いに秘密を共有しながら、またエッチな話に花を咲かせる。

少したってヤンキーの女の子をあきらめる事となった。
理由は思い出せないが、それほど深い理由ではなかったように思う。
釣り合わないとかだったと思う。

H君のすすめで「まじめな女の子にしろ。Tさんなんていいぞ。」と言われ、優等生グループにいたTさんを好きになる事になった。

友達のすすめで好きな人を変えられるなんて、おそるべし思春期の俺。

Tさんは当時大流行していたWinkというアイドルユニットの鈴木早智子をイメージさせる、おとなしそうな女の子であり、多感だった僕はスーパーアイドルの鈴木早智子とその子を重ね合わせ、瞬く間に恋心は急加速していった。

夏休み前のとある日の放課後に告白する事となった。
何故か僕はH君に「○月○日○曜日の放課後に告白する」という宣言をしていた。
H君はTさんと同じグループにいた別の女の子と仲が良く、「かのたつはTさんにどう思われているか?」とか「告白はうまくいくか?」など聞いてくれていたみたいだった。
やがてTさん本人の耳に入り、告白当日はまるで待ち受けていたかのようだった。
ものすごく緊張した初めての告白。
どのような言葉で気持ちを伝えたか覚えていないが結果は上手くいった。

しかし、告白して付き合う事になったものの、どうすればいいかわからないし、何をすればよいのかわからない。
H君にいろいろとアドバイスをしてもらったところ、どうやら恋人同士は3日に一度は電話で話をするらしいという事。
僕は忠実に3日に一度電話し、電話を切る時には「じゃあ、3日後にかけるから」とおかしな事を言っていた。

休みの日に会うという事になり、公園でファンタを飲みながらお話をする事になった。
何を話していいのかわからず、思った事をすぐに口に出してしまうB型の僕は彼女に「Tさんが学校に着てくるYシャツって、いつも黄ばんでるね」と言っていた。なぜ、そんな事を言ったのか、今でもわからない・・・。
そんな中、あまり会話も弾まず、間が持たなくなり、わずか2~3時間でその日はお別れする事となった。
次の登校日には彼女は真っ白に漂泊したYシャツを着ていた。

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夏休みに入り付き合って2週間ほどたった頃、H君にまたまたアドバイスをしてもらったところ、どうやら恋人同士は付き合って2週間ほどで彼女の家にあがるらしいという事。
そして抱き合って下のほうを触ると彼女はたちまち動けなくなるという事。

う~ん、高校生になったばかりにしてはハレンチすぎる内容である。
はたしてどこまで飛躍するのだろうか。
段階も踏まず、そんな間違った情報を正当な判断もできず、真に受けた僕は彼女に電話で誘う事となった。

正直恐かった。
未知の世界に足を踏み入れてしまうようで。
女の子と付き合うって事はこんなに大変な事なんだって。
でも、大人になるための試練なんだって自分に言い聞かせていた。

そんな僕は電話をかける前から相当緊張していた。
鼓動も早くなり、呼吸も荒かった。
会話を家族に聞かれたくなくて、コードレスホンを持って家の外にでて電話をかけたが、緊張はおさまらず呼吸はさらに荒くなるばかりの中「ハ~ッハ~ッ、あのね、ハ~ッ、家に行きたいんだけど・・・」と言っていた。

まるでヘンタイ電話である。

当然、彼女に断られ、次に会う約束もとりつけないまま電話を切った。
無知だった僕でもさすがに今の電話はまずかっただろうと少しながら察知した。

夏休み中に1回だけ、全校登校日というものがある。
夏休みの中盤あたりに登校して、ホームルームだけして帰るというものだった。
ホームルームが終わると彼女はスタスタと帰っていった。
まるで僕とすれ違わないようにしているかのようだった。
帰りにゲタ箱を開けてみると手紙が入っていた。
彼女からのもので、内容はもう僕とは付き合えないというものだった。

こうして、ひと夏の恋は終わった。
僕は相当なショックを受けたが、そんな心の中にわずかながらの安心感もあり、自分では気づいていないかもしれないが、少しホッとした感情もあったと思う。
その夜、H君にその手紙を見せたら、なんと持っていたライターでその手紙を燃やされてしまった。
自分の親友がフラれた事に対し、Tさんに対して許せないという思いがあったようである。

恋というものは思いつめてしまうもので、フラれた後はさらに恋心が膨れ上がり、もう戻ってこない彼女に対して、相当な想いをよせていた。
授業中に何度も彼女を見ていたり、自転車で彼女の家の前を意味もなく何度も通ったり、WinkのCDジャケットを何時間も見ていたり、失恋に関する歌を歌詞の意味もよくわからずに聞いたりしていた。

3ヶ月ほどたった頃、どうしてもフラれた理由が知りたくて、友達づてに彼女に聞いてもらう事にした。
すると理由を知った友達は僕に言いたくないと言う。
ショックを受けるだろうから言いたくないとの事。
ショックなんて受けないからどうしても教えてくれと言って、しぶしぶその友達に教えてもらったところ

「かのたつ君、変だから」との事

それを聞いたとたん、相当なショックを受けた。
ショックなんて受けないからなんて当然ウソであり、とにかく知りたかったのである。

しかし、この時まで理由がわからないなんて、そうとう無知だったんだろうなと今になって思う。
でも、フラれた理由が「変」って・・・、当時の僕には相当応えた。

淡い恋だけど、自分なりに背伸びして大人になりたかったのかな。
電話のプッシュボタンを最後まで押しかけて、何度も切ったりして電話もかけれずにいた、あの頃の恋ってもうできないと思うと少しさみしいような気もする。

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