5年前、15年ほどの東京生活を終え再び地元へと戻った。
これまでは自分のためだけに生きてきたが、東京でやりたいことは実現できたので、これからは誰かのために生きようと思っていた。
親と疎遠になっていた空白期間を埋めようと地元で車を購入。
ほぼ毎日、母親をドライブに誘った。
コンビニで安く売っているカップのカフェオレを買ってあげると、決まって母は「ご馳走やね」と笑顔を見せた。
そんな母も今年3月にガンを宣告された。
その時僕は、再び東京で生活することが決まっていたため、看病などはほかの兄弟に任せることに。
兄弟からは近況を知らせようと、たまに家族で撮った写真などが送られたが、日に日に痩せ、衰弱していく母の姿を見るたび胸が痛くなった。
10月にはとうとう余命宣告を受け、緩和病棟へと入院。
電話で母と話したときは、か細い声で「またドライブに連れてって。カフェオレが飲みたい」と言われ、「次に帰った時に行こうな」と答えた。それが自分にできる精一杯だった。
週末には夜の高速道路をとばして実家に帰省。
母をドライブに連れて行きたかったが、その時にはもう外出もできないような状態だった。
結果11月、1年にも満たない闘病生活の末、母は帰らぬ人となった。
自分は本当に親孝行できたのだろうか。母は満足に逝くことができたのだろうか。
これからは後悔することのないよう、1分1秒を大切にしたい。
そして、一歩一歩噛み締めながら歩んでいきたい。
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