とある駅前の商店街でふと祭りをやっていたので立ち止まってみた。
お酒も入ってほんのりと赤くなった浴衣姿の男女をちょうちんの光がほどよく照らし出していた。
特設ステージでは男二人組が和太鼓を披露する事になったのだが、こんな暑い夜に男くさいステージは正直見る気がしなかった。
しかし演目が始まったとたん、背筋に凍るような電撃が走った。それと同時に舞台の最前列へと急ぐ。
ひとつしっかりとした芯のあるものの中に数少ない太鼓の音がぎっしりと凝縮されて絶妙なハーモニーを奏でている。それでいて男はお互いにお互いの空気を感じとり、相手の出方を時折見ながら、自分の大事な部分を出したり引いたりしている。
僕は客席にいながら、伝わってくる鼓動をしっかりと受け止めようとしていたのだが、ちゃんと向き合わなければ、たちまち押し返されてしまう。
そんな貴重なひと時もあっという間に終わってしまい、演目が終わった後も、僕はなかなか放電する事ができず、ただただ立ち尽くしていた。
どうやら男たちは和太鼓のグループに所属しながらも、2人でユニットを結成、和太鼓の先生もしているとの事だった。
今回のステージは営利を目的としているわけでもなく、ただ聴いてもらいたい一心で、こんな熱い夜にステージに上がっているのだ。
その後、僕は男性の一人とお話をさせていただいたのだが、演目が終わって時間もたっているのに、男の額からはまだまだ汗が滝のように吹き出ている。もう一人の男も見てみたが、やはり汗がものすごい。
僕にはとうていこんな”美しい汗”はかけないななんて感じながら、いつものように汚い汗をかきながら家路へと向かう夜となった。
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