20代前半の頃、僕は北海道で牧場の仕事がしたいと思い、半年間住み込みの仕事をすることとなった。
4月から10月の北海道なので、とても過ごしやすいいい季節だった。
僕が行った場所は道東の別海町というところ。中標津が近い。
冬の間、住み込みをしていた人と入れ替わりになり、東京から来た標準語の男性と二人で半年間過ごすことになる。

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北海道の人はとても温かく、寒い土地なのにみんな温厚。
大地は広く1世帯の広さがものすごく広い。
東京ドームが何個分入るんだろうというぐらいで、隣の家に行くのに車を使う。
業務は牛の餌やりや乳ふき、子牛の世話などをする。

牧場

ある日、牛の出産の立ち会いをする事となった。
親方に呼ばれ母牛のもとにたどり着いた時には、すでに子牛の足先が出ていた。
足先にロープをくくりつけ、親方と標準語の男性と僕と3人がかりでロープを引っ張る。
母牛の呼吸に合わせ親方が掛け声をかけ、それに合わせ僕らが力いっぱいロープを引っ張る。
その時の母牛の表情といったら、なんともいいがたい生きる源を感じさせる力強い表情だった。
負けじと僕も渾身の力をふりしぼり、男3人と母牛の共同作業によって子牛は生まれた。

その時僕は、生涯忘れられないぐらいの感動を覚えた。
決してきれいごとではない、生きる事の素晴らしさや命の尊さが僕の中にしみわたる。
最近、立ち会い出産をする夫婦が増えていると聞くが、その気持ちがすごくよくわかる。

子牛は生まれた後、母牛と引き離し、子牛用の牛舎に移される。
これもまた標準語の男性と僕と2人がかりで連れていくのだが、子牛は母牛と離れるのが嫌なのか、必死に抵抗しようとする。
無理やり引っ張ろうとすると地べたにペタンと座り込み動こうとしない。
とてもかわいそうなのだが、どうしても連れていかなければならない。
僕も標準語の男性も、心を鬼にして業務にとりかかった。
しかし、その後それよりもつらい業務を行う事となる。

続く…

 

第2話→

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